マウスピース矯正と
ガミースマイル
笑顔の印象を変える最新治療
笑顔は第一印象を大きく左右する重要な要素です。その中でも、笑った時に歯茎が大きく露出する「ガミースマイル(Gummy Smile)」は、多くの人にとって見た目のコンプレックスになりやすい問題です。特に美意識の高い現代においては、ガミースマイルの改善を希望する患者が増加傾向にあります。
かつては外科的手術が中心だったこの問題に対して、近年では「マウスピース型矯正装置(アライナー)」を活用した非外科的アプローチが注目を集めています。本記事では、マウスピース矯正とガミースマイルの関係性、治療の可能性と限界、症例に応じた治療戦略などを詳しく解説します。
ガミースマイルとは?
ガミースマイルとは、笑ったときに上顎の歯肉(歯茎)が過度に露出する状態を指します。一般的には、笑った際に歯茎の露出量が3mm以上あると「ガミースマイル」と診断されることが多いです。
主な原因
- 上顎骨の過成長(垂直的過成長)
- 上唇の過剰な動き(過活動)
- 歯の萌出過程の異常(過萌出)
- 歯列の前突や口元の突出
- 短い歯冠(歯が小さいように見える)
これらの原因が単独または複合しているケースが多く、原因を正確に診断することが治療の第一歩です。
マウスピース矯正とは?
マウスピース矯正は、透明なプラスチック製の装置(アライナー)を用いて歯を段階的に動かしていく矯正治療法です。
代表的な製品には「インビザライン(Invisalign)」があり、取り外し可能で審美的に優れている点が特徴です。

マウスピース矯正によるガミースマイル改善のメカニズム
ガミースマイルに対するマウスピース矯正の活用法は、主に以下のような治療戦略に分類されます。
1. 前歯の圧下(intrusion)
前歯が過剰に萌出している場合、マウスピース矯正によって前歯を骨の中に押し下げるような動きを加えることで、笑ったときの歯茎の露出を軽減することが可能です。
2. 前突の改善
口元が出ている「口ゴボ」や「上顎前突」の場合、前歯を後退させることで口唇の突出を抑え、相対的に歯茎の露出を少なく見せることができます。
3. スマイルラインの調整
歯の位置や傾斜を調整することで、笑顔時のスマイルライン(上唇のカーブと歯列の調和)を整え、見た目の印象を改善します。
マウスピース矯正のメリットと注意点
メリット
- 審美的に優れている:装着していても目立ちにくい
- 可撤性:食事や歯磨きの際に取り外し可能
- 歯の細かな移動に対応できる:デジタルシミュレーションによる精密な治療計画が可能
- 痛みが少ない:ワイヤー矯正に比べて痛みが少ない傾向
注意点
- すべてのガミースマイルに対応できるわけではない
- 装着時間の自己管理が重要(1日20時間以上)
- 骨格的原因が強い場合は外科的介入が必要
複合治療の選択肢
ガミースマイルの原因が骨格性や歯周組織の問題に由来する場合、マウスピース矯正だけでは十分な改善が見込めないこともあります。そのような場合には、以下のような治療との併用が検討されます。
- 歯冠長延長術(クラウンレングスニング):歯茎を切除して歯の長さを見た目に長くする
- ボツリヌストキシン注射:上唇の筋肉の動きを一時的に抑制
- Le Fort I型骨切り術などの外科的矯正手術
マウスピース矯正を土台として、必要に応じて他の手法を組み合わせることで、より理想的な審美結果が得られます。
実際の症例に学ぶ
症例
26歳女性
主訴
笑うと歯茎が大きく見える(ガミースマイル)
診断
- 骨格性2級歯性2級咬合
- ハイスマイル時の歯茎露出:約7mm




治療
- アライナー矯正で前歯の傾斜を改善し、相対的圧下を2mm
- さらに絶対的圧下1mmを加え、歯肉露出を軽減
- 歯冠長延長術により歯のバランスを調整
費用
マウスピース矯正88万円(税込)+歯冠長延長術16.5万(税込)
総額104.5万(税込)
結果
笑顔時の歯茎露出が3mm未満となり、自然で美しいスマイルラインを実現
まとめ
マウスピース矯正は、ガミースマイル治療において非常に有効な選択肢の一つです。原因を正確に診断し、個々の症状に応じたアプローチを選択することで、外科的処置を避けつつ審美的な改善が可能になります。
患者さんの生活スタイルや希望を丁寧に伺い、適切な治療計画を立てることが、満足度の高い結果を得るカギとなります。ガミースマイルに悩んでいる方は、まずは専門医に相談し、自分に合った最適な治療法を見つけてみましょう。